特集 市町村の保健行政を分析する
主題—市町村の保健行政を分析する
地方自治と住民の保健—市町村行財政を中心として
東田 敏夫
1
1関西医科大学公衆衛生学教室
pp.536-548
発行日 1966年10月15日
Published Date 1966/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203350
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はじめに
国民の健康を守る行政活動の具体的実施を,国民の日常生活に直結する第一線地方自治体の業務とすることは,近代政治の通則である。
とくに,市町村段階は,住民が自らの政治を処理する住民意識をもち,地方政治に直接参加する可能性が大きい"全自治体"への途に近いはずであり,その意味では,住民の福祉と保健に関しては,市町村を第一義的機関とするのは自然の理である。しかし,問題は,今日の日本の中央と地方の行政体制が,それにふさわしい状態にあるかどうかということである。旧憲法下においては,地方行政は独占資本にむすびついた絶体主義官僚制による中央集権の支配下にある出先機関であり,衛生行政もその例外ではなかった。民主憲法下においては,地方行政は,憲法第39条が規定する「地方自治の本旨」にもとづくものでなければならないはずである。「地方自治の本旨The principle of local autonomy」とは,杉村敏正教授によれば,「一般に統治の民主化を確立,実現するために,地方的利害関係のある事務を,地方公共団体の負担と責任のもとに,その機関の固有の意志決定によって遂行するとともに,地方住民の意志によってその機関構成者が選任さるべきことを意味する。」10)
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