特集 地域住民と環境保健
環境保健と地域住民
安倍 三史
1
1北海道立衛生研究所
pp.124-130
発行日 1975年3月15日
Published Date 1975/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204965
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はじめに
アメリカは国家環境政策法(1970.1)の中で,「環境問題の根本的な原因は複雑であり,深い面をもっている.第1に,成長の質を犠牲にして成長の量を強調する従来の傾向は,環境汚染の社会的コストを経済が十分に計算に入れなかった.第2に,立案や決定のさい,正しい必要な手順として環境の要因を十分に考慮に入れなかった.第3に,環境に対する影響を考えず,生活の便利さを優先させた.第4に,環境を全体としてとらえず,人間を含めた環境の各部分が根もとでお互いに依存し合っているということに対する理解と認識がなかった」と前書きし,この法律の目的は「環境と生物圏に刻する損傷を防除し,人間の健康と福祉を増進するために努力し,国民にとって大切な生態学的体系と天然資源についての理解を深め,環境問題会議を設置することにある」とうたっている.このことは日本の場合にもそっくりあてはまる.大統領にこういわせた背景として,大規模な地域住民の公害反対運動があり,多数の学生や私的団体のアピールによってアース・デー(地球の日)が提唱されたことがあった.
日本でも,野党3党から64国会(1970)に環境保全基本法案が提案され,通過はしなかったが,衆議院の付帯決議として与野党が「健康で文化的な生活をいとなむことは国民の基本的な権利であり,そのためには,長期的な視野で現在と将来の国民のために,国をあげて良好な環境が確保されなければならない.
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