連載 [事例集]新しい健康日本21へのヒント・2
高齢者の社会参加で医療費低減―徳島県上勝町のケース
稲葉 陽二
1
,
尾島 俊之
2
1日本大学法学部政治経済学科
2浜松医科大学健康社会医学講座
pp.462-466
発行日 2013年6月10日
Published Date 2013/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664102162
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上勝町の概要
上勝町は徳島県の中央部のやや南東に位置し,徳島市から約40kmのところにある(図1)。徳島市から車で1時間弱の距離ではあるが,阿波勝浦町から勝浦川沿いに進むと,どんどん山並みが険しくなる。さらに進むと,川の両側に集落が勝浦川を挟んで散在する景観に息をのむ。町内は700mを超す標高差がある。1955(昭和30)年に高鉾村と福原村が合併して上勝町となった。両村が勝浦川上流(つまり上勝)に位置して,木材の搬出・販売に「上勝」の刻印をして市場に出していたことから「上勝」という新町名となった。
この地域では,以前は林業とみかんで生計を立てていたが,林業は木材価格が低迷し,みかんは1981(昭和56)年の異常寒波で120haあったうちの約8割が枯死するという壊滅的打撃を受けた。また,町は勝浦川の上流域に沿って形成され,かつ県下でも最多雨量を記録する地域でもあり,集中豪雨による大洪水・土砂崩れ・地すべりなどの災害に毎年のように悩まされてきた。合併当時の人口は6000人を越えていたが,1980年代には半減していた。
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