連載 PHNに会いたい・11
―徳島県那賀町―高度地域包括医療への挑戦と新たな本題
荘田 智彦
,
殿谷 加代子
1
,
濱田 邦美
2
,
蔭岡 美恵
1
1那賀町相生保健センター
2那賀町相生包括ケアセンター
pp.580-587
発行日 2008年7月15日
Published Date 2008/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101367
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お陰様で,本連載も無事後半へと折り返すことができました.全国のPHNを案内人に〈われわれ(public)〉の,姿,顔を探して,飛び回っていますが,日本中で同じような状況,たとえば高齢社会の社会資源が充実すればするほど,後ろに続く「家族」がいない,後継社会が育っていないこと(空っぽ)に気付かされ,ゾッとしています.前回,高齢社会の社会的支援体制の先進例として富山市の「富山方式」を紹介しましたが,その富山市の介護の現場で「資源が入ると,地域が離れる」という住民の声を聞きました.ここでいう「資源」「地域」という言葉の使い方も時代を映していますが,「地域」の前に(あるいは同時に)「家族」も離れてしまっていることが,もっと問題ではないかと思います.
さて,私は今回,先行して生活習慣病(メタボ)対策に取り組む徳島県で,最近注目されている「メタボ対策」以前から,町の診療所医師,保健師たちの多彩な取り組みで高い健康度を保っている町があると聞き,徳島県那賀郡那賀町を訪ねることにしました.案内人は旧相生町(平成17年3月1日合併で那賀町)の殿谷加代子保健師にお願いしました(写真1).那賀町でも冒頭に書いた思いと同じことを感じました.「本当に“私たち”はこのままでいいのか」,私たちは何か大事なものを忘れているのではないか,私はその答えを,今回の那賀町の取材から学ばせてもらった気がします.誰もが目の前の激しい変化に対応しようとするあまり,人としての手離してはならない「生きる習慣」を,どこかに置いてきてしまったのです.
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