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要旨
本調査は,虐待に影響を及ぼすと考えられる母親のしつけと体罰に対する認識と母性意識の関連性について明らかにすることを目的とした。
調査対象は,A市(人口約42万人の中核市)にある認可幼稚園のうち,調査協力の承諾を得た3歳児クラスに在籍する児童の母親とし,統計解析には,回収できた1029名の資料を使用した。
母性意識尺度が否定的で母親であることを受け入れることが難しい傾向にある母親は,しつけのためなら軽微な体罰はやむをえないと感じており,逆に母性意識尺度が肯定的で母親役割を積極的に受容できる母親は,しつけのためであっても軽微な体罰も望ましくないと感じていることが確認できた。
しかし,実際の育児の場では,叱ってしまい,少し度がすぎたと後悔をした経験を88.7%の母親がもっており,冷静に考えることができる時は体罰はいけないと感じていても,感情的になった時にはつい手を出してしまう現状があり,認識と行動のずれが確認された。
20項目のしつけに関する母親の認識を因子分析した結果,放置することによって生命に関わる部分として「放置群」,強制・排除・拒否に関わる部分として「強制群」,直接的暴力として「暴力群」の3つの因子が抽出された。
多くの人がしつけの範囲と感じている「大声でしかる」という項目を含む暴力郡の各項目については,回答がかなり分散しており,しつけか虐待かの判断がつきにくいあいまいな部分であることが把握された。
明らかに虐待と多くの人が感じる行為より,しつけか虐待かの判断がつきにくい,あいまいな部分のほうが見逃されやすく,外部から介入しようとしてもしつけと正当化されることから,虐待の発見の遅れにつながる危険性が示唆された。
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