講座
新しいしつけ
平井 信義
1,2
1愛育研究所愛育病院小児保健部
2お茶水女子大
pp.10-14
発行日 1954年8月10日
Published Date 1954/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200781
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取り扱い難い子供は先ずその原因を探ろう
泣き虫,暴れん坊,嘘つき,引込思案といつたような行動を我々は異常行動と呼んでいる.爪かみ,いじる癖なども異常行動であるし,どもり,偏食,お寝小など,数え上げると200に近い異常行動が挙げられる.
このような異常行動を示されるとこれまで,親や保育者は,それが子供自体の問題であるかのように考えて,叱つたり,押入れに入れたり,或はなだめすかしてその場を取繕ろうことに努力した.その結果はどうであつたろうか.叱られた後数時間はおとなしくしていることもあつたろうが,その後は再び異常行動が出てきて,前よりもひどくなることさえある.或は一つの異常行動かなくなつても,別の異常行動が出てくる.指しやぶりを手をつねり上げるという方法でなおしたら,臍いぢりが始つたとか,お寝小をお尻をたたいてなおしたところ,どもりが始つたという類の例は沢山出ある.これは,結局,子供にそうした異常行動を起させる根本の原因,即ち心因を理解せずに異常行動のみを治療するからである.肺炎という病気は樣々の症状を持つが,その一つの症状である高熱を癒すために下熱剤を用いても肺炎の治療にならないのと相似ている.
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