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はじめに
昨今,地域における健康問題はきわめて複雑多様化し,これらの健康問題に対応するためには地域保健従事者の資質向上が重要であると言われている。2002(平成14)年度から,保健師を含む地域保健従事者の人材育成・現任教育に関する検討が行われ,系統的な教育プログラム構築の必要性と,企画立案など行政能力を身につけるための教育・研修の必要性が報告されている1-3)。
現任教育のなかで,とりわけ新任期の5年間は,地域保健従事者として公衆衛生の視点を身につけ,キャリア開発していくうえで最も重要な時期である1)。言い換えれば,新任期の教育の結果は,専門職としてのその後の長いキャリアを左右するといっても過言ではない4)。
しかしながら,新任期は公衆衛生の視点が希薄で,多様な健康問題に対応する能力が十分備わっておらず3),保健師としてのアイデンティティも芽生えないまま就業している5)と指摘されている。その理由は,保健師を育成する教育機関の多くが4年制大学となり,実習指導の質量不足のため保健師の専門性を伸ばすような教育展開が難しくなっていること6)や,市町村合併の推進によって保健師の所属する組織が分散し,新任保健師の教育体制の確保が困難であること7,8),業務の多忙により計画的なプログラムに沿った指導体制が欠如していること7,9)が考えられる。
新任期をめぐるこのような状況をふまえ,2006(平成18)年度には「新任時期および指導者育成プログラムガイドライン」10),2010(平成22)年度には「新人看護職員研修ガイドライン―保健師編」11)が提示され,組織的な研修体制の整備の必要性が打ち出された。
筆者らは2004~2005(平成16~17)年度に,採用1年未満の保健師を対象に保健師活動の初期過程である地区診断技術の教育実践を行い,その成果を報告した12)。今回,採用後2~3年を経た保健師を対象に,活動計画と評価能力育成のための教育を試みるとともに,新任期の現任教育の方法について検討した。
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