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はじめに
「自殺者が12年連続で3万人を超えています」で始まったこの連載もこれが最後になってしまいました。早いもので,1年間でこの冒頭も,「自殺者が13年連続で3万人を超えています」に変わってしまいましたし,3月には東日本大震災が起こり,引きつづいて生じた原発事故により,日本の国力が揺らぐのと同時に,多くの日本人の価値観が変わったとも言われています。
さて,本連載もタイトルをあげると, 第1回「連載にあたって:保健師への期待と課題」
第2回「こころの安全週間―普及啓発は自殺予防に有効か?」
第3回「在宅介護者のうつ病とその対策」
第4回「こころの安全パトロール隊員養成講座」
第5回「産業メンタルヘルス」
第6回「人間ドックや特定健診におけるメンタルヘルス導入の意義」
第7回「災害後の心のケア」
第8回「がん患者へのグループ療法―ファシリテーターの養成プログラム」
第9回「小学・中学・高校におけるいじめ自殺とその対策」
第10回「精神障害の普及啓発に関する評価研究(1)」
第11回「精神障害の普及啓発に関する評価研究(2)」
となっています。ほとんどすべてが,厚生労働省科学研究費をいただいた研究班の成果物を,本誌用に再考しながら書き直したものです。
筆者は,これまで病院内でリエゾン精神科医として,各臨床領域のはざまにある問題に焦点を当てて活動してきました。それが研究班を主宰していくなかで,視点を病院から社会に変えていかなければならなくなり,それがきっかけで,社会のなかでのメンタルヘルスの重要性を認識するようになってきました。そのため学会で発表するだけでなく,地域で講演活動をするようになり,ホームページをつくったり,ときには新聞に投稿したり,テレビやラジオなどを通じて提言するような活動をするようになりました。
その後,「やり残したことをやる」ために57歳で大学教授を辞し,いま1年半が経過しました。このような生き方は拙著『50歳からの人生を楽しむ老後術』(大和書房,2011)にも書きましたが,人は50代の10年間で,たとえば同窓会などをとおして過去の点と点をつなぎ合わせる作業をして,どのような経緯で今の自分に至ったのかを振り返り,その後の老後に備えるようです。だから,50歳を超えてから同窓会が急に増えるのだろうと思います。
その意味で言えば,最終回は,これまでの11回の連載を振り返り,現在やこれからの自分の活動内容を述べ,保健師さんたちへのメッセージを伝えようと思っています。題して,「再び,保健師への期待と課題」です。
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