連載 対応困難ケースに出会う保健師のためのメンタルヘルスの知識と技術・18
Learning in Practice 3:これからの面談に必要な知識・1―現代社会と歪んだ思考
姫井 昭男
1,2
1大阪医科大学神経精神医学教室
2大阪精神医学研究所新阿武山クリニック
pp.968-976
発行日 2009年11月10日
Published Date 2009/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664101296
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はじめに
「進んだ社会」にはどんなイメージを抱くかという問いに対して,「物質的に豊かで便利な世の中になること」とか「科学技術が発達した結果,それまでは不可能であったことが可能になる」という答えが圧倒的に多いようです。実際にはどういう社会が進んだ社会なのでしょうか?
上記のような答えも間違いではありませんが,人間が人間らしく生き,苦悩にさらされることのない社会であるということが前提であることを忘れてはなりません。いくら科学が進んで,身の回りのことが機械化・自動化されても,人が人らしく生きるためには,意図的に多少の不便という負荷も残すことが必要なのです。
また,医学が進歩して心身ともに健康になるのはすばらしいことなのですが,死を人工的にコントロールして不老不死のような自然の摂理に反することを実現させることは,人間として人間らしい生き方を否定することになります。進んだ社会とは,現在よりいっそう人間重視で倫理的観念が発達した社会でなければなりません。
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