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はじめに
4回にわたり,東大大学院医学系研究科修士課程「保健師コース」について紹介してきた。本コースの教育を通じて,現行の「大学における保看統合カリキュラム」では時間がなくてできなかったことができるようになった。①継続的家庭訪問で,同一の対象者に複数回家庭訪問することにより,対象との距離が近まり,支援が成立するプロセスが体験できること,②地域診断活動展開実習により,地域の健康課題をその風土を含めて理解し,対策を提案できること,③地域看護管理実習をとおして地域全体のケア水準を俯瞰し,マネジメントする重要性を体験したこと,④修士論文の作成をとおして,その現象に関わる構造を明確にし,必要なデータを収集・解析し,結果の提示と解釈ができるようになり,公衆衛生看護を実践していく基礎技術が修得できることを示した。
折りしも,厚生労働省「看護基礎教育のあり方に関する懇談会」では,看護基礎教育の主要な方向性として,大学化が提示された1)。その後,日本看護系大学協議会は,「看護基礎教育の大学化」に関する意見書を,文部科学省医学教育課長と厚生労働省医政局長へ提出した。また,全国保健師長会では,看護系大学の保健師実習生が急増し,実習の質保証がなされないことを危惧し2),全国保健師教育機関協議会と共同で,保健師教育に関する調査や各県ごとの話し合いを開始した。さらに,日本保健師連絡協議会は,9月22日に,「保健師教育に関する質問」を,文部科学省医学教育課に届けた3)。
このように,現在,種々の機関で「看護基礎教育の大学化」および「看護系大学で保健師教育が卒業要件になっていることの撤廃」を求める動きがあり,少しずつ,保健師教育上乗せに向けての流れができつつある。今回は,上乗せ教育のタイプ別に,その利点と課題を検討したい。
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