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編集後記
和田
pp.768
発行日 2008年8月10日
Published Date 2008/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664101052
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●「春雨じゃ,濡れて参ろう」。行友李風作の戯曲『月形半平太』の中で,主人公,半平太は,折からの雨にもかかわらず,傘を差し出す雛菊を振り切り,この名台詞を吐きます。雨を全く気にしないその精神は,実に“晴れやか”です。
さて,この編集後記を書いている現在,東京は梅雨真っ盛り。外を眺めれば,今日もシトシトと雨が降っています。アメと一言でいっても,「時雨」「氷雨」「涙雨」「霖雨」「驟雨」など,その形容方法は実に多様。雨そのものの捉え方も地域によって様々で,旱魃地域では「天の恵み」として尊ばれ,洪水地域では「自然の脅威」として畏怖されます。私たち日本人は,雨を敬う精神は乏しく,むしろ“やっかいなもの”として捉える傾向が強いようです。宮沢賢治の「雨ニモマケズ…」なんて表現は,雨を好意的なものとして捉えていませんね。「雨男」「雨女」なんて表現も,人を揶揄するニュアンスとして使われることを考えると,やはり雨は日本人の心に“晴れ”をもたらさないようです。
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