連載 ニュースウォーク・110
“医療リハビリ”制限,少し元へ
白井 正夫
1
1元朝日新聞
pp.426-427
発行日 2007年5月10日
Published Date 2007/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100786
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「君子の過ちは日月の食の如し」とは,「論語」に出てくる言葉である。4月から「リハビリ治療の日数制限を緩和」というニュースに,うろ覚えの孔子様を思い出した。過ちは日食,月食のように必ず起こるぐらいに思っていたが,辞書で確かめたらこれは間違い。君子は過ちを犯しても,日食,月食のように隠し立てをしないで改めれば,人々はまた敬服するという意味だった。この際,君子とは厚労省,人々とはリハビリテーションを必要とする患者であり,国民であろうか。
暖かくなった日,街でばったり先輩に会った。近所の人なのに1,2年,姿を見かけなかった。「お久しぶりです」と型通りの挨拶に,「いやぁ,当たってネ」と頭を指差した。脳梗塞で倒れたというが,そのようには見えない。「無様でお目にかからなくてよかったよ。リハビリでようやくここまで戻った」と,後は延々とリハビリ苦闘記である。
そういえば,私もお年ごろになって身の周りに倒れたという人が増えている。厚労省研究班の調査で脳卒中(脳血管疾患の総称)患者は272万7000人(2005年)。高齢化の推移とともに増え続け,ピークの2020年には287万7000人に達すると推計されている。患者の増加が予測されるだけに,失った機能を維持・回復して「人間らしい生活」ができる決め手となる「リハビリ治療」の存在も大きな意味をもってきている。
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