連載 ニュースウォーク・108
“難民”時代近い―医療,介護
白井 正夫
1
1元朝日新聞
pp.244-245
発行日 2007年3月10日
Published Date 2007/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100770
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南米チリを旅して太平洋岸の港町,バルパライソに行ったことがある。太平洋に面して細長いこの国で最大の港町で軍港。観光案内に遊覧船「Doña Carmen Rosa III」号の案内があり,さっそく乗り場に行ってみた。待っていたのは「カルメン夫人」の面影すら残さない,はしけをちょっと大きくした木造の老朽船。船室はなく,ライフジャケットを着けた観光客70人ほどがびっしり詰まっていた。「難民船!」と一瞬ひるんだが,飛び乗った。
「難民」という言葉を聞くと,数年前のこの船を思い出す。しょせん観光の話で,「迫害から国外に逃れた者」とは比べようはないことは承知している。しかし,そのとき身を置いた状況に対する不安は,ぎっしり詰まった人々の形容とともについ「難民」と結びついてしまう。無事に桟橋に戻って買わされた1枚の写真があり,それがまたそのイメージを増幅させる始末だった(写真)。
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