連載 BOOKS
―てんかん革命「難治てんかん」に挑む脳外科医と母たち 大脇 游/著―難治のてんかんに立ち向かう光がもたらしたもの
宮本 ふみ
1
1前 東京都西多摩保健所
pp.673
発行日 2005年7月1日
Published Date 2005/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100754
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通院医療費相談で出会ったBさんは,精神科から処方された抗痙攣剤を毎日定時に服用する,几帳面な青年だった。作業所に通所し,その真面目な働きぶりと対人関係の誠実さは高く評価されていた。社会復帰ができたと家族の方とも安心していた矢先,Bさんは薬の血中濃度低下を発端に重積発作に見舞われ,何か月も精神科に入院してしまう。それ以降彼は二度と作業所に戻ることはなかった。もしこの出来事がいま生起していることで,清水弘之という脳外科医についての情報が確実に把握できていれば…。
てんかん(発作)の治療方法については,小児神経科と精神科か神経科での内服治療しか知らない,という保健師は意外と多いのではないか。本著は,てんかんの2割を占めるといわれる難治てんかんの治療に<MST>と<脳梁離断術>という新たな道を築いた脳外科医と,わが子の未来のために渾身の力を振り絞った母たちとの,出会いと軌跡を克明に語るドキュメントである。脳外科手術の治療法があるの?と思った人は,「てんかんの理解」の章を目にすることで,いままでの自分が得てきた情報の限界を知ると同時に,脳外科治療法の明確な戦術を理解するだろう。
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