連載 フィールドワーク往復絵手紙・5
サナアで余暇を楽しむ
伊達 潤子
1
1山口大学大学院医学研究科(博士課程)
pp.476-479
発行日 2004年5月1日
Published Date 2004/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100695
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イエメンは国教がイスラーム,私はサナアに住んで3年半になるが,ムスリム(イスラームに帰依する者)以外のイエメン人を,いままで見かけたことがない。イスラームでは,お酒は禁止されている。もっとも,「お酒はだめ」という意見と,「酔っ払って,見境のない行動にでることがだめ」という意見にわかれる(両者の言葉は,同じことを言っているようだが,実際におこす行動は,かなり違う)。ちなみに,酔っ払いは,アラビア語で「サクラーン」だが,なんとなく「錯乱」と似ている。ともかくも,イエメン国内では,酒類は販売されていないし,食堂でも,家庭でも,おおっぴらに,お酒を飲むことはない。
イエメンの人びとの嗜好品は,お酒ではなく,カートと呼ばれる葉っぱと,煙草である。カートはCathula Edulisという樹木で(写真1),この樹の新芽の部分(写真2)を,口に含み,葉から出る液汁を楽しむ。このカート噛みの習慣は,もともとは,紅海対岸のエチオピアあたりから入ってきたものといわれている。
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