特集 人口問題を考える
日本の人口問題,世界の人口問題
村松 稔
1
1国立公衆衛生院・衛生人口学部
pp.166-171
発行日 1981年3月25日
Published Date 1981/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205822
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I.日本の人口問題
1)人口問題も変遷する
昭和20年の終戦以来,わが国の人口問題はその内容が時代の変化とともに変わってきた。昭和20年から35年頃にかけては,人口増加が最大の関心事で,外地などからの復員,引き揚げによる人口増加に加えて戦後のベビー・ブームにより,狭い国土に急速に増えた人口に,どのようにして食糧,住居,職業を与えるかが大きな問題となった。ちょうど現在の南アジア,たとえばインド,パキスタン,バングラデシュなどにみられるのと同様な性格の問題であり,人口増加抑制のための家族計画が論じられたのもこの頃であった。
戦後異常に高かった出生率は,昭和35年頃には昭和22,23年に比べて1/2の低い水準に落ち着いた。同時に国家経済の回復,進歩が目覚ましく行なわれ,個人の生活内容も著しく向上した。人口増加を問題視する見方は後退し,家族計画は個人の必要としては残るものの,国の政策としては重要性を失った。大企業は若い働き手を多数吸収し,一部の小企業では人手不足の声が出るに至った。昭和45年にかけては一種の「黄金時代」であった。
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