連載 World Report on Disability 2011を読む・第2回
世界の障害者人口と統計手法をめぐって
江藤 文夫
1
Fumio ETO
1
1国立障害者リハビリテーションセンター
pp.143-150
発行日 2013年2月15日
Published Date 2013/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001100041
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
障害に関する世界報告書では,10億人以上の人々,すなわち全世界人口の約15%〔2010年(平成22年)の世界人口推計に基づく〕が何らかの障害を抱えて生活していると推定されている.1970年代に遡るWHOによる先の推定では約10%とされていた.
この障害者数増加の原因としては,人口の高齢化(高齢者は障害のリスクが高いこと)と,糖尿病や心疾患や精神疾患等の障害を伴う慢性的な健康不良状態の世界的増加にあることが考察されている.しかし,障害の概念に関する議論は集約されつつあるが,国際的に比較可能で良質な障害の計測法に関する合意はいまだ存在しない.CRPD(国連障害者権利条約)においても第31条で「障害統計及びデータの収集」について記載していることから,世界報告書では,障害に関するデータの入手や比較の可能性,データの質を強化することについて詳しく記載している.また,同書の提言8では,「障害のデータ収集を改善すること」を取り上げ,その中で,国内外の障害施策の進捗を基準に照らし,モニターするためにも,そしてCRPDの実行のためにも,データは標準化され,国際的に比較可能なものである必要があり,第1ステップとしては,国連の障害統計に関するワシントン・グループ(WG)と国連統計委員会の提言に沿って,国勢調査のデータを収集することが可能であると述べている.そこで,障害者の定義とも関わる障害統計について,またその国際動向についてはWGの活動を中心に紹介する.
Copyright © 2013, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.