調査報告
介護保険居宅サービス事業所における感染予防対策の実態を踏まえた行政支援のあり方の検討
小野 喜代子
1
,
中野 匡子
2
,
安村 誠司
2
,
長澤 脩一
3
1福島県県南保健福祉事務所
2福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座
3福島県県北保健福祉事務所
pp.674-680
発行日 2004年7月1日
Published Date 2004/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100522
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■要旨
介護保険居宅サービス事業所の感染予防対策の実態を明らかにし,行政機関が行う事業所支援のあり方を検討することを目的として,社会福祉事務所が管轄する介護保険居宅サービス事業所の管理者と従業者を対象に郵送によるアンケート調査を行った。
調査項目は,①感染予防に関する研修の実施,②感染予防マニュアルの整備,③手洗いの実施,④感染症で困った経験,⑤行政機関への要望とした。
研修実施割合は事業所40.3%,従業者30.2%で,MRSAなどの疾患別研修が中心だった。研修を実施している事業所は,実施していない事業所に比べ,マニュアルの整備割合,従業者の研修参加割合が有意に高く,感染症で困った経験がある従業者の割合が有意に低かった。また,ケア前の手洗い,標準的な手洗い・手拭きの実施割合が有意に高かった。マニュアルがある事業所は68.5%で,感染症で困った経験がある事業所,従業者の研修参加,望ましい手拭き実施の割合が,マニュアルがない事業所に比べ有意に高かった。事業所の31.5%,従業者の28.4%に感染症で困った経験があり,原因感染症としてはMRSA,疥癬などがあげられ,解決方法は「上司や同僚と相談する」が最も多かった。行政機関への要望は,マニュアル作成の支援・資料提供,研修会の実施,情報交換体制づくり,経済的補助などがあげられた。
調査にもとづき,社会福祉事務所と保健所は「在宅ケア感染予防研修会」を開催し,調査結果,所内研修のあり方,マニュアルの整備,標準予防策,疥癬対策について解説した。
今後,研修機会の確保とマニュアルの整備に向けて,事業所管理者への支援が必要である。
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