調査報告
山村に居住する独居高齢者の身体状態,社会環境,心理状態にみられる生活実態
新田 静江
1
,
山岸 春江
1
,
郷 洋子
2
,
公文代 真由子
3
,
深沢 幸枝
4
,
古屋 和江
5
1山梨大学大学院医学工学総合研究部
2山梨県立看護大学
3初台リハビリテーション病院
4早川町役場
5芦川村役場
pp.572-578
発行日 2004年6月1日
Published Date 2004/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100504
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■要旨
山村に居住する独居高齢者の生活実態を明らかにすることを研究目的に,山間2町村の59名を対象に,文献をもとに作成した属性・身体状態・社会環境に関する項目と主観的幸福度を測定する日本語版PGCモラール・スケール項目とで構成された調査票を用いた面接調査を実施した。
対象者の平均年齢は78.5歳,大半は当該地域に約60年居住する女性で,配偶者の死別を契機に平均16年以上独居で生活し,収入源は年金であった。腰痛・下肢痛を主とする身体の具合の悪さを自覚するものの,近隣住民とは頻回に顔を合わせ,山・畑(ほぼ毎日)および買い物(週1回以上)には徒歩で出かけ,通院(月1回以上)には村営バスなどを,家族・親類訪問(月1回未満)には家族・知人の車を利用しており,公共交通機関の利用は容易だと認識していた。楽しみがあり,独居は自由で気楽であると感じ,全国平均と同様の主観的幸福感を感じていた。t検定の結果,主観的幸福度と身体状態,交通の利便性,楽しみの有無との間には有意差はみられなかった。
この結果から,人生の大半を現地域に居住し,毎日,山や畑・買い物に徒歩で出かけ,近隣住民と顔を合わせる社会環境が,高齢者が独居を肯定的にとらえ生活を維持していける要素となっていることがうかがえた。地域外に居住する家族との同居や施設入所のために地域を去ることにつながる深刻な健康問題を生じさせないことは,専門職への大きな課題と考えられた。
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