原著
地区診断にみる1山村の実態
田中 正好
1
,
山口 利三郎
2
1和歌山県衛生部予防課
2和歌山県新宮保健所
pp.225-228
発行日 1960年4月15日
Published Date 1960/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202268
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I.はしがき
最近,公衆衛生の分野でも社会学の調査方法がとり入れられ,地域住民の全般的な健康上の諸問題をとりあつかう傾向が多くなつてきている。古い公衆衛生学が急性伝染病にはじまる個々の疾病を対象としたのに対し,次第にそれが,人間そのもの,生活の場における具体的な人間を対象とする方向に向いつつある現在,それは当然のなりゆきであり,生物学における生態学の目ざましい発展にも呼応するものということが出来る。生の人間は集団をはなれては考えることが出来ないし,その集団の病患は直ちに個人の疾病につながるものである。地域社会における集団構造の分析から,その病患の摘出と更には解決への端緒を発見せんとする一連の方法に対し,地区診断1)なる名称を以てよばれているが,これこそ公衆衛生活動の最も基本的な出発点であると言うことが出来る。このように地域社会が問題となるとき,そこに農山村の保健が大きく浮び上つてくるのを見るのであるが,戦後吾国の大きな変転の中で,果して農山村の住民はどのように生きているであろうか。これをあきらかにし,特に高年齢層の疾病を探る目的で,われわれは最近,特殊な隔離された環境にある1山村の地区診断を実施したので,その成績から山村住民の実態をつたえたいと思う。
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