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■要旨
本調査では,より質の高い福祉用具利用のあり方を考えるために,要介護高齢者が,福祉用具購入後にどのような身体的・精神的変化があったと意識しているかについて明らかにすることを目的とした。
対象は,熊本県甲佐町に住み2002(平成14)年度までに福祉用具を購入した要介護高齢者144名のうち,調査の目的を説明し,同意を得た111名とした。ただし,調査時の死亡者および転出者は除いた。調査期間は,2003年9月1日~2004年1月31日で,質問紙による面接調査を行った。「福祉用具の購入による影響度」以外は量的に分析し,「福祉用具の購入による影響度」については,自由回答の内容を保健師2名・事務職1名で全員の意見が一致するまで検討し,カテゴリー化を行った。
調査の同意が得られた111名の分析結果では,福祉用具を使用している割合は63.3%で,要介護高齢者の生活上の支障に対し福祉用具を使って住環境整備を行うことで,ADLの自立度向上や維持につなげ,さらに家族の直接的介護負担の軽減ができていた。しかし,福祉用具を購入しても使用していない割合が36.7%で,ADLの状態が悪化して使用しない場合や施設入所や在宅のデイサービスやショートステイで対応して使用しない傾向があった。また,購入した福祉用具が対象者や家族のニーズに合わない場合や,骨折のように一時的にADLが低下して使用したものの,その後改善したため,まったく使用していないという現状があった。
以上のように,福祉用具の利用による要介護高齢者の身体的・精神的な影響について明らかになった。この調査結果から考えられた福祉用具購入のケアマネジメントに関する課題を,以下に示す。
①今後の意向について,要介護高齢者やその家族を含めて話し合う。
②病状の悪化による身体的変化を十分にアセスメントし,導入にあたっての時期を見極める。
③介護力などを考慮し,目的に合わせて機器・用具の選択を行う。
④住環境整備を含めて,ほかのサービスとのかかわりを考える。
⑤福祉用具を利用した効果を確認する。
以上より,高齢者の特性や要介護高齢者の疾病の状態を配慮し,また,高齢者個人を多角的に分析して慎重に購入につなげるケアマネジメントが必要であると考えられる。
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