連載 ルポ フランスの家族 5
遅れる若者の自立
児玉 しおり
pp.942-945
発行日 2006年11月1日
Published Date 2006/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100345
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親元から自立できない「タンギー世代」
28歳のタンギーは,パリのエリート校を出て高等教育機関に在籍し,日本語と中国語も繰る秀才。親切で礼儀正しく,ルックスもいい。そんな優秀な1人息子をもつ親の悩みは,その気になれば国家公務員でも大企業でも就職先に困らない息子が一向に就職しようとせずに,親の家にずるずると同居していること。タンギーは,次々と恋人を家に連れてきては自分の部屋に泊め,両親とダイニングで顔を合わせ相手の女性のほうが嫌気がさして逃げる,というパターンを繰り返している。しかし,タンギーはまったく意に介しない。
息子を扶養するお金には困らないけれども,息子の自立を望む両親は,あの手この手でタンギーを追い出そうとする。しかし,なんとか説得して1人暮らしをさせても長続きせず,ホームシックで体調を崩し,救急車で病院に運ばれ,挙句の果てには,「子どもを養育・保護する親の義務」を盾に息子が起こした裁判に負けて,再び息子を同居させる羽目になる。ある日,口論の末にこつ然と姿を消したタンギーから,数年後に両親のもとに便りがある。彼の住む中国を訪ねると,中国人の女性と結婚して子どもをもうけたタンギーは,裕福そうな大きな家で妻の両親らと暮らしていた。一生を親と暮らすというタンギーの夢は,中国の義理の両親との同居で叶えられたのだ。
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