連載 保健師と精神科医との往復書簡・6
患者にも自分にも「善き人」を強いない。そう腹を括りたいと思うのです。
ひらす けい
,
S
pp.878-882
発行日 2005年9月1日
Published Date 2005/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100212
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がん患者として生きる保健師と,地域精神保健活動への助言者である精神科医との間で交わされる往復書簡。援助者としてと同時に患者として,さざなみのように揺れる援助の姿に本物を求める保健師と,援助の検証を深める精神科医との対話から,多くの教訓が引き出されていきます。
ひらす けい様
拝復
Weil先生の警句は,「善と悪とは,1つの直線の両端に対峙して厳然と存在し,その中間に灰色の日常的な現実世界が位置している」といった単純な理解モデルを気持ちよく粉砕してくれるものでした。人の心には,何ひとつ単純な現象などありません。しかし,それならば人の心の基本は悪の中に存し,善はその隠し味?などとひねくれた考えが連想されてしまいました。おそらく,善悪を一般的に定義すること自体,一筋縄にはいかない困難を秘めているということ,あるいはその両者は,ふだん私たちが素朴に考えているほどに対立的なものではないということを暗示しているように,私には受け取られました。
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