発行日 1950年10月15日
Published Date 1950/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906725
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産婦人科病棟に於いて
この病棟は女だけの世界であるといえる。從つて女の長所,短所,そしてその惱み,喜びが極端に發揮されている。ことがこゝの特徴であろう。
或る看護婦達は女の患者は大嫌いだという。何故なら,次ぎから次ぎへと細かい訴えや注文が多く,何をいつてもすぐそれを感情的に解釋して泣いたり,笑つたりする。すなわち一口にいつて彼女達は面倒くさい患者達なのである。しかし,他の看護婦達にいわせると,女の最上の誇りであり喜びであるところの「生み」の場にあつて性の神秘さに直面し,自分の働き通しで母性としての美しさを滿喫出來ることは樂しいことで,又,肉體的疾患(婦人科的疾患は女性の不幸の表徴の一つといえる)に伴つて精神的にシヨックを受けた女性との會話によつて慰さめを與え,新らしく再出發のきつかけを作つて上げたりすることの出來得る喜びは,同じ感情を持ち同じ性を持つた女同志に於いて始めてなし得るのであるから,この病棟ほど働き甲斐のあるところはないというのである。
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