シネマ解題 映画は楽しい考える糧[26]
「善き人のためのソナタ」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院医学薬学研究部生命倫理学分野
pp.637
発行日 2009年8月15日
Published Date 2009/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101752
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監視国家―「壁の向こう」の現実
本作品は「ほかの人々の人生(Das Leben der Anderen)」という原題をもつ,2007年アカデミー賞外国語映画賞受賞作品.1989年にベルリンの壁が崩壊する,その5年前の東ドイツを舞台にした物語です.主人公は国家保安省大尉で尋問と盗聴の専門家ヴィースラーと,彼に監視される一組のカップル.反体制的と疑われた劇作家と女優である恋人の生活を盗聴しはじめたヴィースラーが他者の人生に「参加」した結果,国家の潜在的敵である二人を助ける側に回りさまざまな工作をする様が描かれています.
社会主義国家の正当性と恩恵を信じて疑わなかった,それゆえ国家に素直に従わない者たちには容赦しなかったヴィースラーが愛に触れ,自由の素晴らしさを知り,芸術に揺さぶられる.今までの自分の人生にはなかったものに触れ,自らの信条と価値観を180度転換させます.やはり人生でさまざまな大切なものに触れることは重要ですね.とくに自分の生命倫理観を確立するには必須でしょう.
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