連載 保健師と精神科医との往復書簡・10
なぜ患者は,病を負ったことの責任を感じずにはいられないのでしょう。
ひらす けい
,
S
pp.74-80
発行日 2006年1月1日
Published Date 2006/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100031
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がん患者として生きる保健師と,地域精神保健活動への助言者である精神科医との間で交わされる往復書簡。援助者としてと同時に患者として,さざなみのように揺れる援助の姿に本物を求める保健師と,援助の検証を深める精神科医との対話から,多くの教訓が引き出されていきます。
S先生
拝啓
じりじりする日差しに身体が追いつかない日々が続くなか,ふと耳を澄ますと,夜にはかすかに虫の声が聞こえてくる候になりました。そう遠くないうちに,窓からそっと秋が忍び寄ってくることでしょう。季節の素早い移り変わりと同じよう,私の森と沼地を行き来する生活も一旦終結し,いつの間にか再び森にこもる生活に移行しています。
化学療法が8クール続いたものの,予想どおり新剤への耐性が出現し始めたからです。がん細胞とは事ほど左様に執念深い輩(やから)ですが,先生が前回の通信で伝えてくださったように,無駄なエネルギーを消費することなく力を温存できることを目指して,がんと共存する道を探っていこうと思う今日このごろです。
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