連載 フランスの児童虐待防止制度・1【新連載】
フランスの児童虐待の現況
児玉 しおり
pp.62-65
発行日 2005年1月1日
Published Date 2005/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100010
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少ない児童虐待事件の報道,しかし…
2004年8月,パリ郊外のドランシーという町で,破れて汚れた服を着て裸足で道を歩いていた3人の兄弟が警察に保護された事件が報道されると,たちまちフランス中に論議が巻き起こった。この子たちは低所得者向けの公営住宅に住む夫婦の子ども5人のうちの3人で,近所の人の通報でことが明るみに出た。警察が自宅を訪れると,アパートは紙おむつと犬のふんが散乱し,目をそむけたくなるほどの汚なさだったという。1歳2か月から7歳までの5人の子どものうち,1歳2か月の子は体重が4kgしかなく,2歳の子は犬の咬み傷が治療されずにそのままになっており,全員が一時,病院に収容された。
児童虐待を未然に防ぐためにさまざまな予防措置を講じているフランスで,子どもがこのようなひどい状態になるまで放置されていたという事実は,関係者に大きな衝撃をもたらした。マリー=ジョゼ・ロワン家庭・児童担当相は,「危険な状態にある子ども」についての情報を当局に通報することが,違反者には罰則を伴う市民の義務であることを強調し,親の責任を厳しく追及するとともに児童福祉関係の機関が正常に機能していたかどうかの内部調査も行う,という異例の厳しい声明を発表した。
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