調査報告
市町村における「健康日本21」計画の現状と課題―計画担当者の声の分析
上杉 正幸
1
1香川大学教育学部
pp.56-61
発行日 2005年1月1日
Published Date 2005/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100009
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■要旨
市町村における「健康日本21」計画の現状と課題を分析するために,2003(平成15)年に530の市町村を対象にしてアンケート調査を行った際,自由記述欄を設け,計画の特徴や策定時の苦労を書いてもらった。その結果,208の市町村の担当者から声が寄せられた。本報告は,その担当者の生の声をてがかりに,市町村計画の問題点や課題を分析したものである。
担当者の声をまとめると,住民の健康観にもとづいて計画を策定しようとした場合に,住民の意見を1つにまとめ,目標を設定することが困難な状況が浮かび上がってきた。その困難さは,住民主体の計画づくりを謳った「健康日本21」計画のジレンマから派生するものであり,担当者たちはこのジレンマに直面しながらも,住民の意見をまとめ上げようと苦労していることがわかった。また評価方法についても,国の計画の総論と各論のズレに当惑しながらも,数値目標を設定することの是非を議論し,評価方法を模索したと考えられる。そして計画推進にあたっても,住民の主体的参加による事業推進の難しさを感じ,他部署との連携を進めようと苦労している。その一方で,住民の意見をまとめる苦労をするなかで,担当者と住民のネットワークが形成される方向も示されている。
このような苦労をしながら,時間的・予算的問題を乗り越え,計画策定に取り組んだのが多くの市町村における現状といえる。担当者たちのその苦労を知ることによって,「健康日本21」が抱えるジレンマや,総論と各論のズレが課題としてより明らかになってくる。
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