海外だより
フランス整形外科の現況(2)
弓削 大四郎
1
1山口県立中央病院整形外科
pp.225-233
発行日 1967年2月25日
Published Date 1967/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904200
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II.フランス整形外科の現況
私はフランスのすべての大学の整形外科を廻つて見学し,意見を交換した訳ではないので,この題目が正しいかどうかは疑しいが,Paris,Lyon,Aix-Ies-Bains,Marseilleの各病院での模様や,フランス整形災害外科学会に出席して得た範囲から記したいと思う.帰国して何か新しい変つたものはないかとよく尋ねられたが,特別にそんなものは見当らなかつたし,こんなことはどこの医学先進国と言われている所を廻つても答えは同じであろう.しかし,一般的に,フランスの医師の伝統的な歴史的な考え方は,医学研究は人体研究であらねばならぬということである.そのためにはでな面はないが,地味な治療に直結したものが積み重ねられて工夫されて行く訳で,一つの教室があるテーマを中心に,動物実験から縦に深く掘り下げて行くような日本式の研究体系は教育病院では行われない.またフランス人の個人主義的な気質からして,多くの研究は個人的な個性的なものが多いようである.教授の命令一下教室ぐるみでやるような研究体制は育たない風土であることは間違いない.整形外科の分野でも戦後はAnglosaxonの強い影響を受けていることは事実で,手術術式は言うに及ばず,特に手の外科や形成外科関係は,アメリカ留学を終えた人が指導的立場にあつた.以下私の学んだものの内でUniqueなものや,興味を持つた手術等について紹介したいと思う.
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