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現状のカリキュラムからみた看護学への提言
長吉 孝子
1
1埼玉県立衛生短期大学
pp.743-750
発行日 1977年12月25日
Published Date 1977/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663908971
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I.看護学の必要性
従来,日本の医療を支えている医学は診断学に中心が置かれてきたが,看護もまた,その跛行的医療の補助ないし介助に重きが置かれ,その活動の多くは経験と情熱で支えられてきた感はぬぐえないところである.近年,社会構造の発達と複雑化の中で,医療環境が医学をして疾病の診断・治療から予防へ,さらに健康の保持増進への展開を余儀なくされてくるに従い,看護もまた人間の有機体としての存在に着目し,健康や疾病に及ぼす心理的・社会的,または文化的要因に目を向けるようになり,総合保健医療の一環として看護概念も拡大され,総合看護としての志向を深めてきているのが現況であろう.
総合看護とは,金子によれば1)次のようになる.看護の‘対象である人間というものは,個性をもち,人格をもち,意義をもって生活している社会人であること,さらに身体と心と生活とがバラバラでなく全体的統一をもった能動者であるということを理解し,人間をいわゆる人間らしく取り扱うということは,その人の健康を増進し,また回復するための必須条件であるといえよう.個人個人が長い生涯を健康に過ごし,寿命を全うするまでの間,これを守り通すためには,それぞれ個人の生活の条件がある.これをできるだけ通常の状態に近く,かつ次元,次元に必要とする状態に整え,ケアを行うために健康に関する科学や技術を総合し,応用することが看護の総合性ということになる’.
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