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講座
心理学シリーズⅠ 発達心理(3)―認識機能の発達
Psychology Series I: Developmental Psychology (3)
高野 清純
1
Seijun TAKANO
1
1筑波大学心理学系
1The Institute of Psychology, The University of Tsukuba.
pp.440-445
発行日 1981年4月15日
Published Date 1981/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102386
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Ⅰ.ことばと認識機能
ことばの第3の機能は認識機能である.人間は高い認識機能によって,他の動物をはるかに凌駕するまでに進化することができたと言える.もっとも,ことばは認識機能の発達によって獲得されるものであるから,ことばがなければ,認識機能はないというものではない.たとえば,認識機能の中でもっとも高度な機能と考えることのできる思考でさえ,ことばを話せるようになる以前の赤ん坊にもあることを否定することはできないのである.
しかし,ことばの発達に伴って,記憶力は増加し,複雑な問題を考え,解くことができるようになることもまた事実のように思われる.ことばがものの見方や記憶に影響することについては,いくつかの研究がある.たとえば.図1の中央に画かれているようなあいまいな図柄(原図)を記憶させる場合に,そのまま覚えさせるより,それぞれの図柄に適当な名前をつけて覚えさせる方が効果のあることが知られている.しかも,どのような名前をつけるかによって,後に思い出させて画かせた場合に,違った図柄が再生されるのである.図1の一番上の図柄の場合,「Cという文字」と名づけると,アルファベットのCのように画かれる.一方,「三日月」という名前を与えた場合には,そのような図柄が画かれたのである.また,三番目の図柄に「アレイ」と「メガネ」という名前をつけて覚えさせたところ,それぞれの再生図に見られるように,つけられた名前にふさわしい図柄が画かれたのである.
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