ぶっくがいど
患者心理
栗栖 瑛子
1
1東大衛生看護学科神経科
pp.49
発行日 1964年2月10日
Published Date 1964/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203044
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医療に従事する人々はつねに,種々様々な訴えをもって医療機関を訪れる患者を,広い視野にたってみることを忘れてはならない.とかくわれわれは,患者にどのような検査をすべきかとか,どのように詳しく検査を行なうか,診断がどう行なわれるかなど病気の身体的側面に関心をもち,病気である人間としての患者自身の心理的,社会的背景を無視し,患者心理の問題を軽く扱いがちである.患者め症状や重さで,医学的検査や治療の性質は異なってはくるが,もっとも良い治療者であり,看護者であるためには,患者の傷害や病気が表面的にどうあれ,患者の病気や苦しみの本質を物語るもっとも微妙なサインを見つけだすことができる敏感な鋭い眼が必要であり,患者の心の動きにこたえてゆくための技術が必要である.そのためには,患者の心の動きを鋭くとらえるようにつねに心がけねばならないし,患者の心の働きを,即座に受けとめられるようにしなければならない.
患者の治療・看護の第1歩は患者との面接によって,患者の心の奥にかくれている患者の悩みをつかむことであるといえるだろう.われわれが日常接している患者には,病人であることを知っていても患者となろうとしない人たちもいるし,自分が病人であることを知らなくてもそうだと診断されればすぐに患者となれる広い適応力をもった人もいる.保健婦が訪問を続けても喜ばれるどころか有難迷惑に思われることもある.
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