特集 健康へのアプローチ
健康と時代—ヒポクラテス,トマス・モア,フランシス・ベーコン,ナイチンゲールの健康観と時代的背景
森山 佳子
1
1徳島大学教育学部特別教科(看護)教員養成課程
pp.555-569
発行日 1985年9月25日
Published Date 1985/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663908141
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
人間は,いつの時代にも‘健康’な状態を維持・獲得するための行動を,しっかりとした知識のあるなしにかかわらず行ってきた.それは,‘健康’が損なわれた‘病気’といわれる状態に陥った時に,苦痛を味わい,生活上の支障が生じるからである.原始時代において,病気になるということは即,死にかかわる問題となる場合も多かったと推測される.
原始人にとっての病気は‘全部精神的’1)であり,それも‘心霊的または降神的な意味’2)をもつものであった.それは,彼らには,病気というものを把握するだけの知識を得るための条件が,全くといってよいほどなかったからだといえよう.だから,原始人の‘心理的エネルギーは,病気自体を取除くための現実主義的な努力に向けられず,病気のもたらす不安と恐怖を追払う問題の解決にささげられた’3)のである.
Copyright © 1985, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.