医道そぞろ歩き—医学史の視点から・35
ベーコンの「学問の進歩」への道
二宮 陸雄
1
1二宮内科
pp.572-573
発行日 1998年3月10日
Published Date 1998/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909291
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医学の分野では,すでに2世紀にローマのガレノスが,さまざまな動物の実験によって新しい科学的医学の構築を試みている.動脈には血液がなく精気(プネウマ)だけがあるという伝統的な思想を確かめるために,ガレノスは動脈を針で刺して血液の存在を示したり,尿が尿管によって膀胱に入ることも,尿管の結紮によって示した.しかし,時代思想としての4原質,4体液論からは逃れられないまま終わった.
ロバート・ボイルが『懐疑的化学者』を書いて,すべての物質が4原質(火空土水)やパラケルススの3原質(水銀,硫黄,塩)からできているという古来の帰納的推論を排除したのは1661年のことである.ボイルは,ある理論の反証となる実験的事実がある場合には,先入観を去って疑問を提出しつづけた.
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