主張
衞生教育の基礎理念
三木 行治
pp.100
発行日 1951年2月15日
Published Date 1951/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200773
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衞生教育の必要性については今更くどくど言うまでもない。豫防接種ひとつやるにしても,罪人を扱うように,とつゝかまえてプスリとやるのが近代公衆衞生の原理でないかぎり,民衆の理解と協力は絶對に缺くことのできない要素であろう。
しかし衞生教育はおそろしく難しい。なぜ難しいかといえば,結局それが人間の心に關することだからであろう。人間の心ほど複雜で微妙なものがこの世にまたとあろうか。古來數えきれないほどの哲學者の心理學者や文學者が必死となつて人間の心ととりくみ,今日なおその全貌をつかむにいたつていない。この世で人間の心の學問が一番おくれている。人間の心はいろんな要素によつて左右される。たとえば内的環境として遺傳があり,髄質があり,生理的病理的な條件がある。思想や知識や性格がある。年齡や性別も影響する。外的環境の因子として,職業,經濟,風俗習慣,傳統,家族,民族,社會,風土,國家といつたものがある。衣食住も入る。
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