特集 個を生かす教育への歩み
Ⅱ.個を生かす教育をめざして
教育実践レポート
個を生かす学習を求めて—全校体制の中で取り組んだ教育実践
松尾 兼幸
1
1長野県大町市立仁科台中学校
pp.43-53
発行日 1980年1月25日
Published Date 1980/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907408
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はじめに
戦後,教師中心の指導をさけて,子ども中心の学習を展開すべきである,という主張が教育界の通念となり,今日まで根強く続いてきている.すなわち,終戦直後の昭和20年代においては,子どもの活動を尊重するところに教育は展開されるべきだとして,デューイの唱えた経験主義の教育がその主流をなした.しかし,子どもたちの経験を重視するあまり,今日まで先人の築き上げてきた文化財の授受がおろそかになることが憂慮されるようになった。そこで,子どもたちが将来,社会生活を営んでゆく上に必要な知識・技能は教授してゆかねばならない,とする考え方が強まり,昭和30年代には,いわば主知主義の教育とでもいうべき系統的な教育が展開されてきた.
ところが,敗戦より立ち上がった我が国は,科学・技術の進歩とともに産業構造の大変革をもたらし,その結果,経済・文化の高度成長を招来し,このため膨大な知識・技能の量的氾濫が起こり情報化社会が生まれた.これに伴い,人々は多量な知識・技能の吸収に迫られた.このことは教育社会にもおよび,子どもにも多量な知識を注入する結果になった.
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