看護研修学校特殊研究・5
看護婦にとって体験の積み重ねとは何か—気になることを振り返ることによって,私が気がついていくプロセスを通して
佐藤 実江子
1
1日本看護協会看護研修学校
pp.746-761
発行日 1979年12月25日
Published Date 1979/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907392
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はじめに
看護学校を卒業して,某病院に就職した私は,ある奇妙な実態に直面した.というのは,経験年数が3年目の看護婦も,5年目の看護婦も,10年目の看護婦も大して変わりがないという現実だった.むしろ,年数がかさむに従って,看護への意欲のほうは反比例して低下しているようであった.
これは,どういうことなのだろうか? 確かに年数多く経験している看護婦は,仕事のスピードは速いし,古いことに関しては,こういうこともあった,あの時はこうだったと,いろいろよく覚えている.しかし,それは何か羅列的でしかなく,積み重ねられ,熟練された何かを持っているという感じがしなかった.さもなければ,知識の切り売りに熱心になる看護婦ばかりが目立った.
私は,ある種の不安に襲われた.‘私も,後輩の看護婦からそんなふうに見られているかもしれない’という不安にである.
そんな中で,頭をもたげてきた内なる疑問,それは,‘看護婦にとって,休験を積み重ねるとは,どういうことなのだろうか?’‘看護婦として熟練していくとは,どういうことを言い,そのためには,どういう方法を取る必要があるのだろうか?’ということである.
私は,この自らの内なる問題意識を明らかにし直し,その解決の方向を見つけるために,この特殊研究に取り組んだ.そして,自分自身の実習体験を,再度,整理検討してみる中で,わずかではあるが,私なりに理解し,体験を積み重ねるための方向性のようなものを見い出すことができた.
ここに,その内容を報告することによって,今後の看護の研究活動に役立てたいと考える.
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