人間と科学との対話
人間の一回性
村上 陽一郎
1
1東京大学教養部
pp.132-136
発行日 1977年2月25日
Published Date 1977/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907071
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社会的存在としての人間
この連載の第1回に,科学としての医学は普遍的な知識としての一般化を土台にして成り立っているが,人間はそういう一般化を最終的に許さない一回性・個別性を備えた存在である,という意味のことを書いた.
このことは,人間が社会的な存在であることを否定するわけではない.例えば,人間は,他の生物に比べてどうしてこれほど成人までの時間が長いのであろうか.たかだか75年くらいの生涯の実に4分の1以上の時間が,成人するまでに費やされる.これは本来ならばひどい浪費ではないのか.
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