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Ⅰ.はじめに
近年、医療技術の進歩にともなう医療の高度化、疾病構造の変化、平均在院日数の短縮による患者の重症化、看護業務の複雑化、多様化、患者の人権の尊重の中での医療安全への取り組み、医療事故に関する報告数の増加など、医療をとりまく環境は大きく変化を遂げている。そのような状況の中で、臨床実習における学生の教育のあり方も検討をしなければならない状況におかれている。平成13年から、看護系大学卒業者の看護実践能力の向上の必要性と看護職としての社会的責任、並びに国民の要望に対応した看護の質の向上を目的に検討会が持たれ、平成14年に「21世紀の看護のあり方検討会」報告書1)が提出された。この報告書の中では、大学教育における「看護実践能力の育成」のための重要な要素として、「看護ケア基盤形成の方法」「看護基本技術」をあげている。この報告書にある「看護基本技術」とは、単なる看護介入を手順どおりに行うというマニュアル的なものではなく、「当該対象者について、その技術の適用の意義と必要性の判断ができること」2)に重点をおいている。講義で得た知識と技術を統合するためには、臨床実習は不可欠であるが、医療事故などの危惧や患者の安全管理の上で、学習途上にある学生が行う基礎看護学実習の範囲や機会が限定せざるを得ない。また、在院日数の短縮に伴い従来の基礎看護学で行われた「一人の患者を受け持ち看護過程を実施する」という形態の実習の方法を検討する時期でもある。他大学の基礎看護学実習の形態は、一人の患者を受け持ち、看護過程を展開する方法を用いている3)-17)。本学の基礎看護学実習では、学生は患者を一人受け持ち看護過程を展開する方法ではなく、週一回、看護者とともに看護を提供し、看護過程の中の看護介入の一部を体験する。あわせて、今後の学習過程で習得すべき、看護介入の個別性に応じた介入の根拠の説明、より適切な介入技術の創出の意義を学ぶことをねらいとしている。本稿では本学で昨年度実施した実習の報告を行う。
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