講義ノートから
看護学総論・11
服部 裕
1
1大阪府立病院脳神経外科
pp.236-240
発行日 1972年4月25日
Published Date 1972/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906576
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医師教育の片寄り
従来,医師は,患者の身体面・精神面の異常にのみ,偏重した治療を行なう傾向が強かった.それは,今日までの医学教育の片寄りのためであり,人間の健康や生命に影響を及ぼす社会的要因,すなわち,政治的・経済的因子や家庭をも含めた社会的環境などの因子については,ほとんど何も教えられなかったし,また,医師教育の場が,少数の例外を除けば,大学病院に限られているというような片寄った過程を経ていた.
社会的要因について研究している学者はなるほど存在するが,その人たちの意見は少しも医師教育に反映されていないのが現状である.医学そのものも,細分的・微視的傾向が強すぎた.これでは全体としての人間を見失う危険がある.総合的な研究に力を注ぐような医師を育てあげるためにも,医師教育の場における社会科学教育の充実を図らねばならない.医師教育のあり方をめぐって,現在種々の論争がなされているが,大局を誤まらぬ方向に進むよう,われわれのすべてが反省し,努力して行かねばならないと考えている.
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