教養講座・文化人類学・8
未開社会の組織と構造
高橋 統一
1
1東洋大学
pp.52-56
発行日 1969年7月1日
Published Date 1969/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906205
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19.社会組織と社会構造
人間以外の動物においては,個体としての単独の生存能力があっても,「群れ」としての集団生活を営むのが普通であり,この意味で動物もそれなりの社会を構成している。そして昆虫や鳥類の中には,かなり複雑な集団生活を営むものがあることは,生物生態学や生物社会学が明らかにしている。またヒトに最も近いサルや類人猿社会については,その社会構成の一端を先に15章で触れた。しかしこれらの社会があるていど複雑であり,人間社会に近似している面が部分的にあったとしても,それらは人間の社会組織の複雑さには到底及ばず,質的に全く異なるといわざるを得ない。どんなに原始的な未開社会でも,人間社会に固有な集団結合の諸原理があり,それは高度な現代文明社会にも基本的に相通じている。この意味で未開民族の社会組織の調査研究はきわめて重要なのである。
社会の構成要素=単位は個人であるが,個人はさまざまの仕方で種々の集団に帰属する。この集団帰属の仕方,換言すれば集団結合の成立の契機が社会構成を秩序づける。つまり個人によって集団が形成され,それらの集団の諸関係によって社会が構成されるからである。かくて集団形成のあり方(グルーピング・システム)が社会組織(ソーシャル・オーガニゼーション)を方向づける。
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