教養講座・文化人類学・5
人間社会の起源とその分析
高橋 統一
1
1東洋大学
pp.48-52
発行日 1969年4月1日
Published Date 1969/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906159
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14.人間社会の起源と形成
既述のように人類進化学の教えるところによれば,ヒトが地球上に現われたのが約100万年前,少なくみても数十万年前であり,身体形質上,私たちの直接の祖先とみてよい新人の出現さえ8万年も前のことである。そして,これらのヒトがどんなふうな社会生活を営んでいたかについては,化石人骨や遺跡・遺物は断片的なごくわずかなことしか私たちに知らしめてくれない。文字に書かれざる歴史,いわゆる有史以前の人類史を研究する先史考古学も,この点についての知見は甚だ心もとなく,かんじんなことはほとんど何も判っていない。例えば,どんな家族結合で結婚の形態がどんなふうであったのか,ということは推測の域を出ない,というのが実情である。こうしたいわば人間社会の起源と形成の問題に関して,文化人類学=歴史的民族学はこれまでどのように研究してきたのであろうか.19世紀後半の進化主義者たちは,当時の現存未開民族の若干の諸事実をもとにして,これらを段階的・一系的な社会進化の図式に再構成しようとした。その代表的なものが,先にもちょっと触れたL. H. モルガンである。彼は米国ニューヨーク州の法律家で同州北部のイロコイ族の土地係争問題からインディアンの生活実態に深く立入り,彼らの生活改善につくすと共に,自らもその養子の身分を獲得して,彼らの親族組織・社会組織を詳しく実地調査した。
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