教育のひろば
看護婦のニード
野尻 与一
1
1東京学芸大学
pp.5
発行日 1968年7月1日
Published Date 1968/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906030
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先日,教育学畑の若い友人が,「看護婦の集りで“いかにして患者のニードを掘り起こすか”について話すことになったが,何かよいネタはないか」と私の所に聞きにきました。私は「患者のニードを掘り起こすことを勉強する前に,看護婦自身の持っているニードをもっと掘り起こす方が先決だと思う」といったら,彼も「自分もそう思うのだが」ということで,そのままになってしまいました。なぜなら,私は,看護の専門性ということが依然として確立していない,と考えているからです。
私は大学を卒業するとすぐ衛生学の方に入ったので,諸姉の実態は直接的にはほとんど知りません。しかしその私も,昭和31年に始まったあの全国的な病院スト事件をきっかけに,ある程度真剣に看護婦のことを考えるようになりました。そして,医学・医術の進歩したこの日本において,なぜ看護婦が不当な労働条件に甘んじていなければならないかを考え,それが結局は日本の医学界のあの封建性と,そこに端を発する看護業務の専門性の未確立にあることを知りました。
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