連載 福祉部門で働く医師からの手紙
ニードとデマンド
牧上 久仁子
1
1豊島区中央保健福祉センター
pp.368-370
発行日 1998年5月15日
Published Date 1998/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901890
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先日北海道医療大学の古谷野先生からいただいたご指摘が「とっても膝ポン」だったので思わず今回のネタにさせていただきました.
クライアントから出される要望「デマンド」を,本人や家族などにとって本当に必要なデマンド(ニード)と,主観的な思い込みにのみ基づき,実現するとむしろ有害ですらあるデマンドに鑑別する必要がある,というのがテーマです.実例を出しますと,「テレビでみたCMの“シルバーカー”というのがとってもよさそうなので区の日常生活用具として給付して欲しい」ということは,適切なデマンドかどうかの鑑別を必要とします(適切なデマンド=ニードとなります).シルバーカーというのはご存じの方も多いと思いますが,乳母車に似た手押し車で,蓋のついた買い物カートです.カートの蓋が座面になっていて,お年寄りが座って「よっこいしょ,あぁ,これは楽で助かりますねぇ」などとつぶやくCMをご記憶の方もいらっしゃるのではないでしょうか? これは手押し車なのでそこそこ杖の代わりになりますし,荷物も入るし,疲れたら椅子にもなって一石三鳥などと思われるのか,お年寄りの間での人気はなかなかです.
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