ものがたり教育史 日本の女子教育・その11
戦時下の女子教育
中嶌 邦
1
1日本女子大学文学部史学科
pp.43-46
発行日 1968年3月1日
Published Date 1968/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905991
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「現代女性読本」事件
昭和6年9月,柳条溝に火ぶたが切っておとされた満州事変は,そのまま同12年7月の日支事変に発展し,さらに南方に戦線が拡大した。同16年12月,戦の勝利のめどのつかぬまま,太平洋戦争に突入し,遂に同20年8月の敗戦を迎えた。14年の長きにわたって,この小さな国土と国民をまきこんだ戦は,否応なしに,「聖戦の遂行」という理由をもって,国内態勢を一本化し,強力に組織化した。
特に,国民教育は,聖戦への志気を高め,持続させる為に重要な役割をもったものであり,政権担当者のゆるがせに出来ない大問題であった。その方向はとりもなおさず,「国体観念,日本精神ヲ根本トシテ学問,教育刷新ノ方途ヲ議シ,宏大ニシテ中正ナル我ガ国本来ノ道ヲ闡明」するにあった(昭和11年の教学刷新評議会の設置理由)。それはしばしば,明治以来の近代科学の移入と定着によって発展して来た学問のあり方と抵触するものであり(例,昭和10年,美濃部達吉の天皇機関説問題)。また大正期の自由教育運動等を無視した,うしろむきの相を呈するものであった。
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