新カリキュラム講座 一般教養課目・5
経済学編Ⅱ
島 久代
1
1立教大学産業関係研究所
pp.38-41
発行日 1968年1月1日
Published Date 1968/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905963
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生産要素
「土地は生産の母であり,労働はその父である」という言葉がある。これは土地と労働が生産にとって不可欠な“根源的生産要素”であることをあらわしている。つまり,土地は天然資源やエネルギーを内蔵し,動物や植物を培養する力をもち,生産の物理的な場所を提供する。したがって,土地を広義に解すれば自然の代表と考えることができる。そして,人間はその努力により自然に働きかけ,自然の力を利用して生産をおこなう。この人間の努力が“労働”である。
労働の能率をあげるにはW・ロッシャーの有名な寓話のように道具が必要である。すなわち,毎日3尾の魚を素手でとっていた漁師が,その労働の一部で舟や網を作れば,それを利用することにより毎日魚を30尾とることができるであろう。これは現在の欲望を直接的に充足する消費財の生産を一部延期し,消費財を生産する手段となる諸財を作り,それを利用して消費財を生産すれば,消費財の生産量を飛躍的に増加させることができるという“迂回生産”の原理を,最も単純な形で説明したものである。消費財を生産する手段となる諸財,つまり工場,機械設備,原材料,農機具,肥料,漁網などの,いわゆる生産財を一括して“資本”ということもある。したがって,生産活動は土地・労働・資本の3つが組合わさって営まれる。これを“生産の3要素”という。
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