教育のひろば
心の結びつき
滝沢 英夫
1
1東京大学教養学部
pp.5
発行日 1967年9月1日
Published Date 1967/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905872
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現在大学では,あまりにも学生が多すぎて個々の学生と教官との心のつながりを求めるのは,非常に困難な事態におち入っている。これは[教育のマスプロ化」といわれていることであり,大学教育の危機として,非常に憂慮されていることである。この学生と教官との意志の疎通が十分に行われていないために,小さな問題が解決せずに次第に大きくなり,教官対学生,または大学当局対学生の激しい対立にまで発展してしまう事態にいたるのである。今こそ教育にたづさわる者がこのことに少しでも努力をはらわないと将来大きな禍根をのこすことになるのではないだろうか。
このことについて大学当局もクラス編成についても学生数を少くしたり,人数の少いセミナーの授業時間を多くしたりして,その対策に努力しているが,私たち教官もあらゆる機会をとらえて学生との心のふれあう場を作って努力しているのが現状である。もちろん学生自身も努力するよう指導しなくてはならない。お互いの心の結びつきを強くしようと努力することにより,美しい人間関係が生じてくるのである。この心のふれあいのない教育は教育とはいえないと思う。
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