教育トピック
教育方法を考えるために
沼野 一男
1
1東邦大学
pp.70-71
発行日 1967年1月1日
Published Date 1967/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905758
- 有料閲覧
- 文献概要
新しい教具は,何のために
この欄ではこれまでいくつかの新しい教育方法を紹介してきた。科学技術の進歩は,教育の世界にもさまざまの新しい教具を持ち込むことになったし,それによって従来の教育方法は大きく変ろうとしている。台所の仕事まで機械化されている今日,教育だけが何百年も前と本質的には変わっていない講義と筆記を中心とする授業を続けていかなければならない理由はないのだから,これは当然のことである。しかし,新しい教具はその新奇さのために眼を引きやすく,その効率が十分検討されないうちに教室に持ちこまれるという場合もある。また,そういう教具を利用しないのは,ただ経済的な理由によるだけで,事情さえ許せばすべての新しい教具を備えたいと考えている教師や学校も実際にないわけではない。それを何のために,どう用いるかは新しい教具を備えてから考えるというのである。
こうした傾向は,教師の教育への情熱のあらわれとして,また,伝統的な教育方法の効率の悪さに対する焦燥感の表明として見れば理解できないことではない。しかし,教育の方法の選定についてはもっと慎重な考慮が必要なのではないか。慎重すぎていつまでも従来の効率の低い方法を続けているのでは困るが,かといって新しい教具を備えつけてから,その利用を考えるというのも決して望ましい姿ではないであろう。
Copyright © 1967, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.