——
看護倫理への提案
芝田 不二男
1
1高知女子大学
pp.61-65
発行日 1966年8月1日
Published Date 1966/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905692
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
看護倫理は有害無用だという意見がある。わたくしもその意見に,原則的には賛成である。しかしわたくしは,いまのところ看護倫理はあったほうがいいと思っているし,取り扱いによっては,かなり大きな期待をかけてもよいと考えている。その理由としての私見を提示するのが小論の目的であるが,それにしても,一つの教科(職業的調整の中に含まれるという形ではあるが)の存在を拒否するというのは,たいへんなことである。しかも積極的に拒否しないまでも,新制度の看護教育がかなりの年月を経た現在でも,多くの指導者が困っているという事態は問題である。ところがそうした事態が,わたくしにこのエッセイを書かせる機縁となったのだから,まわりあわせというものはおもしろい。いきさつは,まさに偶然であった。わたくしがこの方面の権威だからというのではない。どこでも看護倫理には困っているという事情に詳しい出張員氏が,たまたまわたくしの大学を訪れた。そしてたまたま大学での看護倫理を講じているわたくしに,ドロを吐かせてみたら,何か出るかも知れないと思いつかれたのが,事のおこりである。しかしそうはいっても,わたくしのほうにも引き受けた理由がないわけではない。嫌なら断わればいいからである。実をいうとわたくしも困っていたのである。いや現在も困っているといったほうが正直だろう。
Copyright © 1966, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.