とびら
目的と手段
二瓶 健司
1
1星総合病院リハビリテーション科
pp.383
発行日 2018年5月15日
Published Date 2018/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551201183
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「介護予防の目的は介護を予防することではない,それは手段であって目的ではない」.今から15年前,国策として介護予防事業が始まろうとしている頃の話です.当時,理学療法士による介護予防の支援体制を強化するという趣旨のもと,私は諸先輩方に囲まれながら介護予防の効果判定指標を調査研究する事業に携わっていました.その中心は効果判定をどのように行うのか,さらにはどの部分まで行うのかを検討することです.理学療法士は筋力や移動能力の向上という部分の効果判定は得意とする分野かもしれません.しかし,理学療法士であるが故にそこで満足してしまう傾向も否めません.そのため,介護予防事業がなすべき本来の目的は何かということについて,会議のなかで何度も議論されました.
そんな折,公衆衛生分野を専門としている特別委員の先生から,冒頭に記した言葉が発せられます.さらに言葉は続き,「確かに運動機能を高めることで介護されることを予防できるかもしれない.でも本来の目的は地域の高齢者がいかに健康で,いかに活力あふれる人生であり続けられるか,介護予防はその手段に過ぎない.そのために何をアウトカムにすべきか,どのような評価指標を選択すれば本来の目的に導いてくれるのか,理学療法士の専門性が際立つようなアイデアを期待したい」.調査研究の根幹となる部分について,考える道筋を与えてくださった貴重な言葉でした.そして,高齢者の地域における活動状況を定量的に評価できる指標が含められたElderly status assessment set(E-SAS)が完成します.
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